災害用パーティションの役割を考える

災害用パーティションの役割を考える

災害用パーティションの役割を考える



今回は、能登半島地震をふまえて2024年12月に改訂された、自治体向けの避難所に関する取組指針・ガイドラインについて、内閣府が参考としている国際基準「スフィア基準」にふれながら、避難所での災害用パーティションの役割を考えます。



そもそも「スフィア基準」とは?

「スフィア」とは英語の「Sphere(球体)」を意味し、転じて地球を表す単語です。
「スフィア基準」は、地球上どこでも使われることを目指して作られた定性的な基準で、正式名称は「人道憲章と人道対応に関する最低基準」です。

90年代にアフリカの難民キャンプで、適切な公衆衛生上の対策が講じられていれば予防可能なコレラや赤痢などの感染症により、多数の死者が出たことへの猛省を契機に策定されました。

国内でも避難所運営の目安として活用されており、生存に不可欠な、給水・衛生及び衛生促進、食料安全保障と栄養、避難所および避難先の居住地、保健医療などに関する最低基準と具体的な指標などが記載されています。

460ページに及ぶそのハンドブック1)は、日本語版をweb上やアプリからも確認できます。

避難所の居住スペースに関係する最低基準は以下となります。

「避難所および避難先の居住地基準3: 居住スペース
人びとは安全および適切であり、尊厳をもって家庭生活や生計を立てるために必要不可欠な活動を行うことができる居住スペースへのアクセスを有している。」



最低限の基準を実現するための指標

改訂された内閣府のガイドライン2)では、避難生活に不可欠な生活必需品を発災時ただちに提供する物資確保体制の整備を求めています。

「スフィア基準」の居住スペースに関する、最低限の基準を実現するために、支援者が用いることのできる指標として、避難所での居住スペースを1人当たり最低3.5m²(およそ畳2畳分)とすることや、トイレを発災後初期段階では50人に1基、中期段階では20人に1基とし、女性用と男性用の割合が3:1となるよう、想定避難者数に応じて対応することなども明記されています。
内閣府ガイドラインの避難所として確保すべき備蓄等3)に、毛布・飲料水・非常食や簡易ベッドなどとともに挙げられているパーティション。その役割をまとめてみました。




パーティションの役割

主に避難所でのプライバシーと生活空間の確保、レイアウトやゾーニングの設定に用いられますが、発災直後の初動期は避難所が過密で設置スペースが無かったり、コミュニティの結びつきが強い地域では、パーティションは無い方が望ましいという声もありました。4)

しかしながら、避難所での生活が長期化するほど、プライバシーの確保にパーティションの必要性は高くなります。

また、「スフィア基準」の指標によると、「内部天井高の最高点が少なくとも2m」とあるものの、内閣府の資料5)では、感染症対策として「飛沫感染を防ぐため、少なくとも座位で口元より高いパーティションとし、プライバシーを確保する高さにすることが望ましい。また、換気を考慮しつつ、より高いものが望ましい。」とあり、具体的な高さを定めている訳ではありません。

災害用備品のダンボールパーティションについて、流通する商品の製造会社名と形状から、想定している空間を把握するための調査6)によると、高さについては、88~200cmの範囲でばらつきがあり、多くは100cm、150cm、200cm付近のものが多いと考察されています。

高さの特徴はそれぞれ下記の通りです。

●100cm程度
床に座った場合に周囲からの視線を遮りつつ、上からの安全確認が容易。

●150cm付近
適度な閉塞感を持ち、ベッドに座っていても視線を遮ることができ、管理者が見回りの際も内部を確認できる高さ。

●200cm付近
完全に周囲からの視線を遮り、プライバシーが十分に確保される。
( ※6)熊澤・飯塚 2024, p.237 )


それでは、上記の高さに近く、居住スペースや各種個室、ゾーニングなど避難所で多用途に活用できる、災害用パーティションをご紹介します。




出典・参考文献:

1) “スフィアハンドブック2018”.支援の質とアカウンタビリティ向上ネットワーク(JQAN). https://jqan.info/sphere_handbook_2018/, (参照 2025-07-10).

2) “避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針 平成25年8月(令和6年12月改定)”.内閣府 防災情報のページ. https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/2412kankyokakuho.pdf, (参照 2025-07-10).

3) “避難所運営等避難生活支援のためのガイドライン(チェックリスト)平成28年4月 (令和6年12月改定)”内閣府 防災情報のページ. https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/2412hinanjo_guideline.pdf, (参照 2025-07-10).

4) “内閣府における被災者支援の実施状況(避難者に関する発災前・発災直後・発災以降の取組を中心に)”厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001435353.pdf, (参照 2025-07-10).

5) “令和3年版 防災白書|新型コロナウイルス感染症対応時の避難所レイアウト(例)〈避難受付時〉・健康な人の避難所滞在スペースのレイアウト(例)”内閣府 防災情報のページ. https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/r03/zuhyo/zuhyo_t002.html, (参照 2025-08-18).

6) 熊澤 貴之, 飯塚 柊斗.“避難所生活環境における個室居住空間が在室者の心理生理評価に与える影響”.地域安全学会論文集.2024年.45巻.p235-245.J-STAGE. https://doi.org/10.11314/jisss.45.235, (参照 2025-07-01).

産経ニュース 2024/12/11 https://www.sankei.com/article/20241211-KUMJB2WSIBK5JAP3AAWUGFQJJI/, (参照 2025-07-10).





林製作所の災害用パーティション

商品特長
・工具不要で簡単に組み立てと撤収ができます。
※組立説明書も張り布に縫い付けてあるので紛失の心配がありません。
・様々な用途や場面に応える高さ展開。(120・160・190cm)
・ファスナーで簡単に連結できて、高さ違いのパネルも連結できます。
・スクリーンはポリエステル100%素材なので、汚れたら拭き取って繰り返し使えて衛生的。
・張り布自体に収納できるのでゴミも出さず、コンパクトに収納・備蓄が可能。
・カラーバリエーション(ブルー、ベージュ、グリーン)によりゾーニングが容易。


120cm
・床に座った状態、もしくは寝た状態のレイアウト用に最適。
・完全に遮蔽するのではなく、立ち上がれば周りが見える高さです。
・上からの安全確認が容易。
※心理的に落ち着かない緊急避難初動時のプライバシー確保に適しています。



160cm
・背伸びをすれば中が見えるレベルの高さ。
・簡易ベッドや机などを設置の場合にも、一定のプライバシーを保てます。
※心理的に落ち着いた状態に適しています。



190cm
・簡易トイレ、更衣室、授乳室などに最適です。
※周囲から遮蔽されたプライバシー空間を作ります。





災害用パーティション

ファスナーで簡単に連結できる、軽量の簡易パーティション。
張布自体に収納でき、コンパクトに備蓄が可能です。
汚れたら拭き取って繰り返し使えます。







災害用パーティション【新型】

スクエア形状のフレームに刷新。より組立と解体が容易になりました。
アジャスター機能により、凹凸のある床面に対応&別売の安定脚により直線レイアウトもできます!





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